退職願を提出し、引き継ぎをはじめとした諸手続きを終え、最終出社日まで乗り切れば、いよいよ転職を成し遂げることになります。ただ以前お伝えしたように(⇨「転職の心構え④ 定着までが転職活動」は)、新しい会社に定着し、自分なりに納得のいく日々を送ることが、私たちの最終的な目標であるはずです。そこで今回は、その転職先にスムーズに定着するための心構えをお伝えします!
どこの会社でも嫌われるキラーワード
私もこれまでに複数回転職し、転職する側だったことも、転職者を受け入れる立場だった時もありますが、在籍したどこの会社でも嫌われていたフレーズがこちらです。
「前の会社ではこうだったんですけど」
おそらくどの転職関連の本やウェブサイトにもNGワードとして書いてあると思いますが、転職先の職場でこれだけは絶対に言ってはいけません!
どんな会社にも良いところと悪いところがあり、それぞれの社風に合ったカルチャーややり方が形成されています。
それをつい数日前に入ってきたような新人にあーだこーだ言われて、心地よいと感じるような奇特な人はこの世には存在しません。新卒入社のプロパー社員は特にそうでしょう。
逆の立場で考えてみるとよく分かります。
どこかのPR会社から新聞社に転職してきた中途の新人に、記事の書き方や、仕事のプロセスに口を出されたら、どう思うでしょうか?
「じゃあ何でこの会社に入ってきたんだよ。そのまま前の会社にいればいいだろ」と感じてしまいますよね。
ですからこのフレーズと、それに類するような前職に関することは、入社後の期間を問わず、極力口に出さないということを念頭に置いておきましょう。
しかしあなたの上司は期待している…
「いやいや、新聞記者から他職種に転職するんだから、ひけらかすようなことは何もないし、何事も一から学ぶ覚悟ですよ」
皆さんはそのような殊勝な考えをお持ちかもしれませんし、それは正しい心掛けです。
ただ一点だけ問題があります。そのような人であれば、中途ではなく新卒採用で間に合うのではないでしょうか?
皆さんを採用した会社側、特に直属の上司となる現場の管理職は、仮に業界や職種が未経験であっても、新卒者にはない何らかの面に期待して中途で採用しているはずです。
にも関わらず、最初のしばらくはともかく、いつまで経っても見習いのような振る舞いをしていたら、「早く期待した成果を出してくれないだろうか」と思うことでしょう。
やがて思うだけでなく、具体的なプレッシャーとして、皆さんにのしかかってくることが容易に予想されます。成果を出してくれなければ、採用した管理職の責任になってしまうからです。
彼はきっとこう言うでしょう。「これまでの経験を生かしながら、ウチの社員ではできないような成果を生み出していってほしい。そのために外からの風を入れ、君を採用したんだから」
最初の数ヶ月で成果を挙げるべしというのは、これも転職本やウェブサイトでよく言われていることです。
こうなったら殊勝な態度を崩して、なりふり構わず前職のやり方や知見を駆使し、成果を挙げにいかなければならないのでしょうか?
同僚の反感と嫉妬ほど怖いものはない
やろうと思えば一匹狼で仕事を進められる(かどうかはポジションによるでしょうが)新聞記者と違い、いわゆるフツーの会社ではチームで仕事を回しているので、同僚を敵に回すと、その部署にいづらい、という以上の実質的なデメリットがあります。
成果を挙げるどころか、仕事が回らなくなってしまうのです!
別に同僚が悪い人でなくとも、特に新卒一括採用中心の会社では、プロパーの社員と中途採用者は、それなりに緊張感をはらんだ関係になります。
どういう力関係に着地するか分からず、場合によっては中途採用者が入ったことで、プロパー社員のポストがふさがれてしまうかもしれません。
こちらも緊張していますが、表面上はともかく、向こうも注意深く、ほんのり恐れを抱きながら見ている可能性があります。
そのような中で、焦って前職のやり方を全面に出して仕事を進めようとしたら、成果につながらないどころか、上司はともかく同僚のいらぬ反感や嫉妬を買い、今後の会社生活に影響が及んでしまうかもしれません。
そもそも期待している上司だって口では色々と言うものですが、いざ上申してみると、なんだかんだ理由を付けて、その会社で今までやっていなかったようなことなんて、責任が取れないので、まずやらせてはくれないものです(私の経験談です)。
結局のところ、その会社のカルチャーややり方の中で上手いことやってくれ、というのが本音のところで、「前職ではこうでした」「この会社にはここが足りないので、ぜひ改善しましょう」などという暑苦しいことは、求められていないと言っていいでしょう。
されど転職者は期待されている
では転職者が期待されていないかと言うと、やっぱりそんなことはありません。
前述のように上司はもちろんですが、同僚だって、最初は緊張感をはらむものの、上手くやっていきたい気持ちは同じです(転校生が来る時のような感じですね)。
とはいえ転職本を真に受けて、真っ先に成果を挙げようとしても討ち死にするだけ。
ではこうした葛藤する状況下で私たちはどう振る舞うべきなのでしょうか?
ヒントは順番を間違えないこと。次回はそのあたりを考察してみましょう。
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