管理職の「罰ゲーム化」が叫ばれている昨今、あえて出世を望まない方も多くいるでしょう。一方で、人にこき使われるぐらいだったら上に行ってやると思う野心ある人や、そこまで積極的ではなくても同世代と同程度には出世したいと思っている方も、もしかしたらいるかもしれません。キャリアの考え方は人それぞれなので、その良し悪しは個々の判断になりますが、そもそもマスコミから異業種・異職種に転職して管理職になることは可能なのでしょうか?
結論:管理職になるのは可能だが…

さて、いきなり結論を言ってしまえば「可能」です。なぜなら私がすでに管理職を数年務めているから(!)です。
冗談みたいな話ですが、マジです(しかも慣れ親しんだ広報とは別の職種で。この会社潰れるんじゃないか…)。
もちろん人事制度は会社によって違うのが大原則ですし、この事例を一般化することはできないのですが、少なくとも私の在籍するような売上高1兆円以上の大企業でも、時と場合によっては可能というのが一つの回答になるでしょう。
まあ異業種・異職種への転職では珍しいのかもしれませんが、当社を見ても転職組で管理職に就いている社員は少なからずいますし、中途採用を完全に外様扱いしていたひと昔前の日本企業に比べれば、転職が盛んになっていることとも相まって、出世しやすい傾向にあるのではないかと感じます。
昇進した理由はたまたま!?
ただ、ではどうすればこうしたコースを歩むことができるのかというと、当事者の一人でもある私にもはっきりとは分かりません。
こう言うと嫌味っぽく聞こえてしまうかもしれないのですが、私自身も当初、罰ゲーム化していると言われる管理職などになりたくなかったのです。
プレイヤー時代も最低限のやるべきことはやっていましたが、サラリーマンとしての自分を早々に見切っていたので、積極的に仕事を取りに行くでもなく、可もなく不可もなくみたいな評価を取り続けていたのです(中途半端に評価されて昇進させられたら困るという気持ちもありました)。
ですから、なぜ昇進したのか自分でもイマイチよく分からないし、気負いも嬉しさもないのですが(ひどい社員ですね…)、仮説としては私が優秀だったからではもちろんなく、「たまたま他に適任者がいなかった」からではないかとにらんでいます。
サラリーマンの人事など所詮、運とタイミングなので、これはあながち外れていないと思っています。
多くの日系大企業では就職氷河期に採用を絞ったせいで年齢構成がいびつになっていますし、大量採用世代の高齢化も進んでいますから、役職定年の増加と管理職登用世代の不足が重なっている可能性を否定できません。
優秀でもポストがなければ座れない
しかしこれは結構本質的な点であり、結局のところポストが空かなければ、どんなに優秀な社員でもその椅子に座ることはできません。
私が以前在籍したある会社は、東証一部(現プライム)に上場している結構大きな企業だったにも関わらず、配属された部署では、あまり人事異動がありませんでした。
すると上が出世か退職してくれない限り、部長は延々と部長のまま、課長もずっと課長のままなのです。
実際は役職名が少し変わるのですが、やっている役割はいつまでも同じで、その下っ端の方も主任とか係長とかになってもやることはヒラのままです。
私は先述のように昇進には興味がありませんでしたが、いつまで経っても同じ上司で、自分の仕事も大して変わらないことには、いささか閉塞感を覚えました。
そして業種・職種を変える変えないに関わらず、中途採用者が多い部署は専門性が高いことから、こうした傾向がやや強いように思えます。
専門性が高いということは、在籍しているメンバーはその業務を遂行するために採用されているわけであり、プロパー社員のようにジョブローテーションを行うことが少ないからです。
となるとその部署の先任か後任か、キャリアが他のメンバーより上か下か、といった点で序列が固まってしまい、下位者が上位者を追い越すのは簡単ではありません。反対に上位者の立場ですと、望むなら比較的容易にポストが手に入るでしょう。
中途採用は部門ごとに行うのが普通ですから、基本的にはこのような中に放り込まれると考えてください。

昇進の現実と部署ごとの事情
もちろん現実はもっと複雑であり、上層部の引きだとか、上司の失脚や健康不安、自分の思わぬ異動などもあって、そう予想通りにはいきません。
現在は転職が盛んですから、上位者がさらに良い条件の会社に転職する可能性だって高いでしょう。私のように予期せぬ形で別の部署に異動し、そこで管理職になるパターンもあります。
だから結局のところ会社と部署次第というのが実際のところですが、新卒のプロパー社員のように同期との競争で勝ち抜いていくというよりは、部署の中の相対的な位置づけで昇進が決まる面が強いとは言えるでしょう。
ただ後述するように管理職になることが必ずしも幸せとは限りませんし、大切なことはキャリアプランや実現したいことと照らし合わせて、自分の置かれている状況を客観的に捉え、必要な手を打っていくことだと私は考えます。
転職活動中はあまり将来の昇進のことなど考えないかもしれませんが、特に30代の方は希望の有無に関わらず割と早くこうした分岐点がやってきますので、頭の片隅に置いておくとよいかもしれません。
自分が希望しているにも関わらずポストがふさがっているかもしれませんし、反対に希望していないのに人がいなくて昇進させられてしまう可能性もあるのです。
管理職になって良かったか?
さて、最後に私が管理職になって良かったかどうかについても触れておきましょう。
簡単にまとめてしまえば「世間で言うほどの罰ゲームではないが、まあそう良いものでもないよね」といったところです。
年収は確かに上がりました。1,000万円を優に超えており、絶対額としては過分と言って間違いありません。ただ差し出すものと比べてどうなのか…?
私はプレイングマネージャーを避けて部下に仕事を任せるようにしていますが、実務が少なくても、人に任せてひたすら待ち、ダメなら責任を取るという行為は結構なストレスです。
自分が三顧の礼で迎えた優秀と見込んだ人材ならそれでも耐えられるかもしれませんが、戦国大名でもない一管理職は与えられたリソースで勝負するしかありません。前回の記事でも触れましたが、部下の管理は大変です。
年収1,000万円以上あっても、負荷を考えると嬉しいか嬉しくないかは微妙なところであり、ここにプレイング業務もあったら間違いなくやりたくありません。
元新聞記者として、かつて潰しが効かない恐怖を味わった私としては、金銭的な報酬というより、キャリアへの投資的な意味合いを込めて続けてきたというのが正直なところです。
ジョブ型雇用やスペシャリストが持てはやされる昨今とはいえ、マネジメント経験の価値が大幅に毀損するということもまた考えにくいですし、今後どのような道を行くにせよ、きっと無駄にはならないでしょう(と信じ込んでやっています…)。
最後は所詮、運とタイミングですから、打席が回ってきたら立ってみる。希望の有無に関わらず、そんな風に考えておくとよいかもしれません。
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