前回(⇨「職務経歴書を書いてみよう① キャリアの棚卸」)「職務経歴」をひとまず完成させました。これは文字通り職務経歴書の骨格に当たる部分であり、ここができないと形になりません。とはいえこれだけでは具体的にどのような人柄・スキルを持った人物なのかが伝わりません。今回はこの「職務経歴」に「自己PR」を加えていきます!
汎用性のある内容に落とし込む
「職務経歴」は事実をもとにポイントを簡潔に、(報道っぽい言葉で言えば)客観的に記述したものです。
これで基本的には、どのような業務に取り組み、どのようなキャリアを築いてきたかは先方に伝わります。
でもよく言えば専門的な、ストレートに表現すれば汎用性のない記者の仕事内容を並べても、同じメディア業界に転職するのであればともかく、異業種・異職種に転職する場合はアピールにはなりません。
そこで、これまで取り組んできたことを汎用性のある内容に落とし込み、自分ならではの「自己PR」をつくっていきます。
あらゆる仕事の共通点とは何か
え、そんなことできるの?
もちろん業務内容を編集から営業・経理・人事などに変えることはできません(それはねつ造です)。
しかしどんな仕事でも突き詰めていけば土台となる共通点があります。
例えば業務の進め方やコミュニケーションのとり方、取り組む姿勢、マネジメント経験などが挙げられるでしょう(もちろん文章執筆力もそうですね)。
仮に同業種・同職種に転職する場合であっても、企業ごとに業務プロセスは異なるので、こうした基礎部分はとても重要になります。
ですからまずは「記者」という枝葉の部分ではなく、「会社員」という幹に注目してもらうのです(嫌かもしれませんが、転職を決意したのであれば、ジャーナリストというプライドは捨てましょう)。
要するに論理としてはこんな感じです。
①これまで主に○○分野の報道に取り組んできました ②特に行政や企業の発表だけに頼らない独自取材に注力。例えばAの取材では、足を使った地道な取材を経て●●のような問題意識を持ち、企画を立案しました(仕事に取り組む姿勢) ③デスクに提案したところ、別の担当グループとの連携が必要であるという意見をもらい、B、C記者に相談、グループをまたいで取材に取り組むことになりました(社内連携) ④日々の取材をこなしながらの独自取材だったため、時間にメリハリをつけるとともに、それぞれの分野で知見がある記者にもうまく協力を仰ぎながら取材を進めました(業務マネジメント) ⑤関係者に必ずしも喜ばれる内容の記事ではなかったため、取材先への説得交渉、各社広報部門への根回しを実施するほか、デスクに記事のポイントを説明し、指摘が入った箇所については再取材・裏付取材を徹底しました(各種折衝、仕事の進め方) ⑥この結果、1面でニュース記事として大きく報じられるとともに、全○回の連載としても記事を掲載、一連の報道が社長賞にノミネートされました(社内での実績)
ここは過去を振り返りながら頭を絞って考えてみてください。
これまでの業務にどのような姿勢で取り組み、どのようなプロセスを経て、どのような実績(社内的な評価でも構いません)を出したのか。
ここまで棚卸ができたら、いよいよ自己PRの作成に入ります。
自己PRは新聞をつくる気持ちで
では上記の棚卸の例をもとに自己PRを考えてみます。
ここがアピールポイントになるわけですから、目を引くように、分かりやすく記述しましょう。
要は新聞記事の要領で作成します。
まずは自己PRの内容を簡潔に一言で表現し(見出し)、続いて詳細な内容を記入していきます(本文)。
ただし詳細に記入するといっても、あまり長くては読んでもらえないので簡潔な表現を心がけます。
(例) ─自己PR─ ○日々の取材だけでなく独自企画に注力しています 取材記者として日々のニュースを追うことはもちろん、地道な取材に基づく独自の企画に注力しています。○年には●●のような問題意識を持ち、A取材の企画を立案。部署をまたいだグループ取材を取りまとめるとともに、デスクや取材先などと綿密な調整を行い、1面でのニュース記事、さらには全○回の連載記事を報道、一連の記事が社長賞にノミネートされました。常に新しいネタを探し、月に2本以上の独自企画を提案できるよう、日々努めています。
こんなイメージでしょうか。
日々の業務への取り組み方や他部署との連携といったことを紹介するとともに、「与えられた業務だけでなく、自分自身で課題を見つけ、提案し、実行する」ということを含めてアピールしています。
なお自己PRは複数書いても構いません(3つぐらいがバランスが良いと思います)。
上記の自己PRだけでは若干精神論的になってしまいますので、そのほかに「短時間で論理的に記事を執筆するスキル」や「(整理部の経験があれば)紙面レイアウトの知見やAdobe Illustrator・Photoshopの操作方法」、「(マネジメント経験があれば)グループでの取材遂行、メンバー育成」などを入れるとよいでしょう。
特に整理記者の経験があれば、一般企業の管理部門では広報でも人事でも総務でも、PR冊子の制作をディレクションする機会が結構あるので、コピーやデザインをある程度チェックできるスキル、素養として、記述しておいて損はありません(記者のキャリアとしては花形ではないと思いますし、外注化も進んでいるかもしれませんが)。
もちろんこれはあくまで一例であって、ご自身のキャリア、強みをよく分析し、その上で自己PRを考えることが大切なことは言うまでもありません。
キャリアは千差万別ですから、ちょっと頭をひねって納得できる自己PRを書いてみましょう。
全てを盛り込もうとしないで
なお、上記の自己PRでは棚卸したことを全部書ききれていないと思ったかもしれませんが、全部書かなくて構いません。
むしろ全部書かないほうが望ましいのです。
なぜなら書類選考はあくまで面接前の前哨戦だから。
まずは興味を持ってもらうことが大切で、より詳細で具体的なことは面接でアピールするように、その余地をぜひ残しておきましょう。
⇨「転職の面接で聞かれることはこの3つ。志望動機、自己PR、○○○○」
次回(⇨「職務経歴書を書いてみよう③ 書面に落とし込もう!」)はいよいよ、これまでにまとめた内容を職務経歴書のフォーマットに落とし込んでいきます!
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