いよいよ退職に向けて佳境に入ってきました。内定先への入社に向けたスケジュールを決めたら、気の重い退職交渉に臨まなければなりません。ただでさえ日本人は物事を途中でやめることに罪悪感を持ちがちなので、退職する旨を長年勤めた会社に申し出るのが憂鬱なのは多少仕方のないこと。とはいえ必要以上に恐れることもありません。それでは退職交渉の進め方について解説していきます!
退職すること自体に交渉は不要
まず最初に認識しておいた方がよいと思いますが、私も「退職交渉」という言葉を便宜上使っているものの、本当は退職に当たっては交渉もへったくれもありません。
労働者には退職の自由が認められていますから、法的には14日前に申し入れをすれば辞められますし、少し余裕を見て1カ月前にでも意思を表明すれば、まず問題はないのです。
ではなぜ退職交渉という言い方をするのかと言えば、円満退職を実現するために他なりません。
法的に認められているからと言って、2週間前に一方的に通告し、引き継ぎも何もしないで辞めるようでは、やはり現職の企業側の心証は良くないでしょう。
辞める会社なんてどうでもいいと思うかもしれませんが、世間は広いようで案外狭く、どこでどのようにネットワークがつながっているか分かりませんから、わざわざ自分から評判を落とすような行為は避けた方が無難です。
たから退職交渉という形で、円満退職に向けて、残りの日数で誰にどのように引き継ぎをするか、残りの有休を何日消化できるか、(最大限譲歩して)転職スケジュールの後ろ倒しは可能か、といったことを協議するのです。
ただ逆に言えば、退職交渉でこちらが得たいものは円満退職以上でも以下でもなく、賃金の上積みや待遇の改善、ましてや退職の許諾ではありません。
間違っても退職の可否を交渉するのではないということに留意しておきましょう。
口にした以上は絶対に辞めること
なぜこのことを最初に認識しておく必要があるかというと、強い慰留があった場合に気持ちが揺らいでしまう人がいるからです。
日系企業では人材を引き止めるために報酬を上乗せするカウンターオファーはないと思いますが、状況によってはあの手この手で引き止めにあう方もいるでしょう。
もしかしたら「不満に感じている点を改善するから考え直してほしい」と懇願されるかもしれません(断言しますが、そのような空手形は必ず反故にされます)。
しかし絶対に意思を曲げてはいけません。
一度でも公に「退職」と口にした人は残っても信用されませんし、自分自身の進退という重大な決断をあっさり覆す人は人間的な評価も下がります(社内ゴシップのネタになりますよ)。
辞めないのであれば口には出さない、口に出したら辞めるのが「退職」の原則であり、退職すること自体は交渉するものではないのです。
これは重要なことなのでよーく認識しておきましょう。
退職を申し出る前にしておくことは?
さてここまでを念頭に置いていただいた上で、具体的な進め方を解説していきます。
まずは事前準備ですが、会社側に退職を申し出ると情報漏洩防止などの観点から行動をマークされることがあります。
もちろん法的にアウトな物はそもそも持ち出せませんが、自分自身の仕事上の成果や知見など、法に触れない範囲で次の職場でも生かせそうな物は、退職を申し出る前にきちんと何らかの処置をしておきましょう。
もちろんこれは機密情報の持ち出しを推奨するものではなく、本来許容範囲である行為にあらぬ疑いをかけられないようにするための措置ですので、そこのところ誤解なきようお願いします。
ちなみに私の経験上、異業種・異職種への転職はもちろん、同じ職種への移籍だったとしても、前職の資料が役に立ったことはほとんどありません(やはり重要なのは頭に入っている知見や、実際に手を動かせるスキルですよ)。
辞表を叩きつけるのはやめましょう
ここまで準備した上で退職交渉を開始します。
全体の流れとしては、
①直属上司へ口頭による申し入れ(退職願はこの段階では不要)
②直属上司からの慰留、引き止め
③慰留を丁寧かつはっきりとお断り(場合によっては日を改めて)
④直属上司から所属長へ報告が上がる
⑤所属長からのヒアリング(慰留、引き止め)
⑥所属長に退職の意思を改めて表明→受理
⑦退職スケジュールや引き継ぎ、有休消化などについて協議
⑧⑦と並行して退職願を準備・提出
のような感じになります。
こうして見ると分かると思いますが、1日で終えることは難しく、早くても何日か時間を要すると考えておいた方がよいでしょう。
なので準備ができたら早めに着手することをオススメします(最初は気が進まないかもしれませんが、実際に退職を申し出ると、自分でもびっくりするぐらいスッキリしますよ)。
また映画やドラマでは主人公がいきなり辞表を叩きつけるようなシーンがありますが、退職願は手続き上の書類に過ぎませんので、現実の社会ではまずは口頭ベースで話を進めていくことになります。
くれぐれもいきなり書面を提出して上司の度肝を抜かないようにしましょう。
それでは次回は、より実践的な部分に入っていきます!
コメント