マスコミ業界ではないのですが、私の身近なところで最近、ある会社が倒産しました(勤務先でもありませんので念のため)。コロナ初期は特に中小企業や飲食店の苦境が伝えられていましたが、最近ではコロナ禍を乗り切った会社は大丈夫なのかと勘違いしていました。グローバルな景気動向も先行き不透明ですが、そこはマスコミ各社が報じていますので、ここでは私の周辺で起きたことを記したいと思います。
その会社は中小規模のメーカーで、もともと納期や価格などの取引条件は厳しく、最近はそれがさらにひどくなっていたようです。ただ周囲はまさかそれが、経営難に起因するもので倒産に至るとまでは思っていなかったとか(そりゃそうだ)。
異変が起きたのはある朝。取引先の担当者が連絡事項があって拠点の担当先に電話をすると誰も出ない。何度かかけ直しても出ないので、不審に思って本社に電話するもこれまた同じ。さすがにおかしいなと思っていたところ、人の良さそうな社員にやっと連絡がつき、「ウチ不渡り出したんです」。たまたま入金日だったので慌てて確認すると確かに入金がない。
一般的に不渡り(支払期日までに決済できないこと)を2度出すと倒産状態と言われますが、『ナニワ金融道』(講談社、青木雄二著)を教科書とすれば「1回でも不渡りを出したら全額回収が金融屋の鉄則」。金融屋じゃなくとも売掛金などの回収に当たらなければなりません。失敗に厳しい日本社会と言われてしまうかもしれませんが、経営がうまくいっていないから不渡りを出すのだと考えると、「遅かれ早かれ倒産すんねん。取れる時に取っとこう、ちゅーことですわ」
しかし敵もさるもの。電話がつながらなかったことからも分かるように、その日の朝には解散の旨を社員に通達して、債権者や取引先が集まった頃には会社はもぬけの殻だったとか。これまた『ナニワ金融道』のドラマ版(フジテレビ系列)の冒頭シーンとそっくりで、まぁ何というか夜逃げ同然ですよね(ナニ金の描写のリアリティには驚かされました)。
会社が倒産すると結構大変で、顧客は新たな調達ルートを確保しなければならないし、取引先は売り上げが減ってしまって頭を抱えることになります。しかし何より大変なのは勤めていた社員。いくら失業保険がすぐに給付されるとはいえ、年齢によってはいきなり背水の陣で転職活動を戦わなければなりません。事前に兆候でもあれば早めの活動もできたでしょうが、同社ではそれほどの大量退職やリストラがあったわけでもないようで、多くの社員にとっては寝耳に水だったのでしょう。会社はいきなり倒産するのです(機密を知らない多くの社員にとって)。
振り返ってみればコロナ禍以降、雇用調整助成金をはじめ様々な補助金が支給されるようになりました。しかしコロナの感染症上の扱いを2類から5類に変更する議論も出ているように、第7波の真っ只中でも世の中は平時の体制に戻ろうとしています。平時に戻ったら支援策の類はなくなるでしょうから、いよいよこれからが経営が厳しい企業の正念場になるかもしれません。「中小企業は日本の宝だ」と美談で語られがちですが、経営が傾けば世間の風は冷たいものです。
さすがに大手マスコミがいきなり倒産するとは思えませんが(でも10年以上前から毎日、産経、時事あたりは厳しいと言われていたので寝耳に水ではないか)、地方紙・業界紙、出版社あたりは小資本の会社も多いので用心しておくに越したことはないでしょう。一般的には経理担当の幹部が退職したら危険なサインと言われています。
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