エージェントとの面談日程が決まったら、履歴書(キャリアシート)と職務経歴書のドラフトを書いてみましょう。面談時にキャリアアドバイザーが指導してくれるので、肩の力を抜き、これまでを振り返りながらポイントを掘り起こしていけば大丈夫。まずは書き方のエッセンスからお伝えしていきます。
興味をもたれなければ始まらない
はじめに認識しておいてほしいことは、履歴書や職務経歴書は自分という商品のカタログだということです。
自分をモノとして考えるのが嫌であれば、業務遂行(要するに労働)というサービスを提供する事業主のカタログだと捉えていただいても構いません。
皆さんも取材に行くときには、事前に企業や団体のホームページや会社案内に目を通して、まずは概要を把握しませんか。
あるいは何かの商品を買うときに、ウェブサイトやカタログに目を通して、スペックを確認しませんか。
この会社案内やカタログに相当するものが履歴書・職務経歴書なのです。
皆さんもこの段階で自分の求めているものと明らかに違う場合には、その後、取材や店舗に訪れることはないでしょう。
転職活動もまったく同じで、書類を見て大まかなスペックをチェックされ、興味を持たれれば面接に呼ばれることになりますし、企業側が求めているものに合わない場合はそれまでということになります。
もちろん企業側が求めているスペックをこちらが持ち合わせていない場合もあるので、むりやり経歴を盛りに盛って自己アピールをしろというわけではありません(重大な経歴詐称は解雇・内定取消の事由になりますし、盛った場合もその能力を期待されるわけですから、入社後に非常に苦労しますよ)。
ただ一方で先方の目に留まらなければ、面接に呼んでもらうことすらかないません。
ですからフォーマットが決まっている履歴書はともかく、職務経歴書では自分の経歴、能力、提供できる価値といったポイントを的確にまとめて、相手に興味をもってもらうような表現が必要になります。
要は新聞記事と同じ考え方で
ただ新聞記者の皆さんはこうしたまとめ方のエッセンスは身に付いています。
なぜなら新聞という媒体自体がこうした考え方のもとに編集されているからです。
記事を一言一句読む人はいないので、まずはキャッチーな見出しで人の目を引きつけ、リードでその記事の重要なポイントを伝えて、後は重要なことから順番に書いていく。最後の方は読まれなくても、整理部に切られても構わない。
この「逆三角形」の記事スタイルはそのまま職務経歴書に応用できます。
記事作成ソフトがMicrosoft Wordに変わっただけですので、多少インターネット上で書式やフォーマットを確認すれば、すぐに書けるようになるでしょう。
スクープの実績は役に立たないが…
問題はその中身です。
一般的に転職活動においては、これまでの業務の棚卸しをして、自分がやってきた経験、それらを通して得られた知見・ノウハウ・能力を具体化し、何ができるのか、どのような価値を提供できるのかをアピールすることが重要だと言われます。
それはまさしくその通りなのですが、残念なことに新聞記者としてのキャリアを振り返っても、一般企業で“直接”生かせそうな汎用的な経験・能力はあまり見つからないのです。
誤解してほしくないのですが、記者の能力が低いだとか、キャリアに意味がないといっているわけではありません。
ただメディア業界以外で求められる経験や能力との乖離が大きいのです。
他社とスクープ競争をして正式発表前に抜いてやったなんて話をしても、一般企業の人事部や主管部の担当者はまったく意味が分からないでしょう。
でもこうした経験がまったく役に立たないというわけではありません。
ネタを抜くには取材先に食い込む必要がありますし、情報の動きを俯瞰的に見る必要もあるでしょう。
記事スペースを確保してもらうためにはデスクとの交渉(いわゆる社内調整ですね)も求められます。
報道後に取材先からクレームが入れば、その対応も(のらりくらりと)しなければなりません。
案外こうしたことは一般企業でも求められます。
したがって新聞記者のキャリアをアピールする上では、直接的な業務や成果よりも、それらを通して得られたエッセンスやプロセスを噛み砕いて、より汎用的なスキルに置き換えて考えてみるといいでしょう。
一般企業の視点で見てみると
そう考えれば記者の仕事でも意外とアピールできることはあります。
では実際に私がどのような職歴書を用意していたかというと、実はてんでお話になりませんでした…。
今、引っ張り出してきて読み返してみても、取り組み・実績に「政策決定過程の裏側を中央官庁、地方自治体、業界団体などに取材してまとめた全5回の連載記事を企画・掲載」「○○の計画を他紙に先駆けて報道。他紙が後を追って報道し、社内表彰の候補に選出」とか書いてあります(これでも転職できたのですから、皆さんも心配する必要はありません)。
実はこのようにアピールしたらいいという知見は、その後、一般企業で働いた経験から導き出されたものです。
大企業で働いていく中で、新聞記者の直接的なスキル、例えば取材先の開拓とか関係構築の手法は使わないけれども、社内人脈をつくる上では間接的に役に立つとか。
あるいは記事を企画することはなくても、何かのプロジェクトに着手する際には、ヒアリング(周辺取材)して、資料を集めて、あれこれ考えて詰めていくというプロセスは同じです。
ついでにデスク(上司)との折り合いが悪ければ企画が通りにくい点も。
ですから仕事そのものを実績として掲げるのが難しくても、そのエッセンスやプロセスは十分にアピールしていくようにしましょう。
上記の連載記事の例でいえば、その企画をなぜ思いついたのか、どのように具体化していったのか、上司をどう説得してスペースを確保したか、どのようなことに配慮して取材を進めたか、などがポイントになります。
では次回(⇨「まず履歴書(キャリアシート)を書いてみる!意外と大事な現職給与」)は、この私の事例を基に実際に書類を作成していってみましょう!
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