文春オンラインをまたも引用する形となりますが、先日の岡山放送に続いて、山形・さくらんぼテレビでもパワハラが横行していることが明らかになりました。今回被害を受けたとされる方は中途採用で同局に入社したとのことで、転職を目指している私たちにとっても他人事ではありません。転職先でパワハラが横行しているかどうかを確認する方法はあるのでしょうか?
パワハラが起きやすい環境は存在する
パワハラに対する当サイトの見解は9月26日配信の以下の記事の通りですが、この時は現職企業でパワハラが起きている場合の対処方法について記述しました。
⇨「岡山放送社員を悼む。パワハラとの戦い方はあるにはあるが、異動や休職、最後は退職検討を」
しかし当然ですが、パワハラが嫌で転職したとしても、次の会社でパワハラがないとは限りません。
そのような悲劇を防ぐためにも、今回は転職先のパワハラ有無を事前に見極める方法を考察していきます。
皮肉ではなく、さくらんぼテレビのパワハラ事例は教科書に載りそうなぐらい分かりやすい例ですので、こちらも一部参考にしながら見ていきましょう。
なお転職先でパワハラが横行しているかどうかを完全に把握する術は、残念ながらありません。
どんなホワイト企業であっても部署によってカラーは違いますし、そこの所属長がどうしようもない場合には、やはりブラック部署になってしまいます。
しかしながらパワハラが横行しやすい「環境」というものは確実に存在します。
個人のパーソナリティはどうしようもありませんが、こうしたパワハラを誘発しそうな環境を避けることは可能です。
それらを一つずつ考察していきましょう。
安定的もしくは競争がない業界や企業
安定していたり競争がなかったりする業界や企業は楽に思えるかもしれません。
それは一面では確かにそうなのですが、裏を返せば、ふざけたことをやっていても倒産しにくいということでもあるのです。
マスコミ業界、特に地方紙や地方局はその傾向が強いと思われます。
文春オンラインによれば、さくらんぼテレビでは2年前、全社員約60人の4分の1に当たる15人以上が一斉退職する事態があったようです。
普通の業界であれば、これでは事業を継続できません。品質は落ちるでしょうし、顧客対応だって滞る可能性があります。
しかしテレビや新聞は放送免許や配達制度で守られていますし、地方マスコミであればキー局や共同通信が全国向けの番組・ニュースを配信してくれますから、パワハラなどをやっていても何とかなってしまうのでしょう。
もちろん抜いた抜かれたという競争が業界で厳しいことは私も知っていますが(特に地方マスコミは地元ネタを落とせないですしね)、それはビジネス上の厳しい競争ではありません。
厳しい言い方になってしまいますが、そういう業界・会社は本質的な意味において暇なので、パワハラとか派閥抗争とか、あるいはビジネスに直結しないような不毛な競争に明け暮れる傾向があるように思えます。
マスコミ以外にもそういうところはありますので、気を付けてください。
業務の成果を定量化できない職種
成果を数字で表しにくい職種もパワハラが発生しやすいように見えます。
上司の好き嫌いで判断できる余地があり、気に入らない内容にはいくらでもイチャモンをつけられるからです。
例えば、営業の数字は絶対的な実績として残るので、良い業績を挙げていれば文句の付けようがありません。
一方で文章の上手い下手などは(ある程度は分かるものの)定量的に評価のしようがありませんから、褒めようと思えばいくらでも褒められますし、けなそうと思えばそれもまた評価者のさじ加減ひとつです。
このような状況下では、ひどい上司は自分の思うがままに振る舞うことができますし、成果物を不当な理由で貶めて自分の権力を誇示することもできるので、パワハラが発生しやすいと言えるでしょう。
これはマスコミに限らず、一般企業の管理部門でもそうですし、私は働いたことがないので分かりませんが、公務員でも同じなのではないかと推察します。
人事異動がなく人間関係が固定化されている職場
流れない水は濁るものですが、組織も同じで、人の動きがないと濁るものです。
異動があれば立場や役割も変わりますし、嫌な上司から離れることもできます。
反対に異動がないと、嫌な人から逃れられないのはもちろん、上下関係の固定化、いわば親分・子分のいびつな関係ができてしまうこともあります。
パワハラが起きる典型例の一つとして、権力者の親分を後ろ盾に、子分が横暴な振る舞いをするというものがあります。
今回のさくらんぼテレビでも、役員の子飼いのスタッフがパワハラめいた言動をしていたと報道されていますが、こうしたケースは非常によく見られます。
一見、子分が親分の威を借りて好き放題やっているようにも見えるのですが、この子分も親分から強いプレッシャーを受けていたりして、でも長年人事権を握られていて、それなりに評価もしてもらっているから逆らうこともできず、部下がそのストレスの捌け口になっている、なんていういびつな関係もできていたりします。
ま、このあたりのケースは色々だと思いますし、今回のさくらんぼテレビの件は分かりませんが、人間関係が固定化すると、それをひっくり返すことは容易ではありません。
評価者が変わらないということは独裁国家と同じでもありますし、今度は子分が親分になって負の連鎖が続いたりすると、もう目も当てられません。
密室は危険がいっぱい!
人間関係の固定化とも関連するところですが、こちらは物理的な環境になります。
人間関係が固定化している上、外部の目が届かない密室で執務するとなると、歯止めになるものが何もなく、ある意味パワハラはやり放題です。
この場合の外部の目は、本当は他部署ぐらいでも構わないのですが、さくらんぼテレビは60人規模の小所帯であり、役員が加担しているとなると、会社全体が密室のようなものかもしれませんね。
地方マスコミ、また全国紙でも地方支局の場合は密室的な環境になりがちだと思いますので、このあたりの雰囲気はなんとなく分かるのではないでしょうか。
結局は会社次第だが、ジョブローテーションは確認を
いくつかパワハラが発生しやすい「環境」を考察してみました。
さくらんぼテレビに限らず、マスコミ全般、さらには一般企業でも該当しそうなところがたくさんありますね。
ただ当たり前ですが、この条件に該当したからと言って、必ずしもパワハラが起きるわけではありません。
また上記は私の経験に基づいて考察したものであり、人によっては競争が激しい業界でもパワハラは起きやすいという教訓を導き出せるかもしれませんし、専門家もまた違った見方をするかもしれません。
結局のところそれぞれの企業、そして上司のパーソナリティに左右されるということにはなってしまうのですが、転職時にはこうした環境面を軽視せず、特にジョブローテーションの有無は確認しておきましょう。
業態や職種の在り方は簡単に変えられませんが、ジョブローテーションは企業側がやろうと思えばできることですし、異動がパワハラへの最も現実的な対応策なのですから。
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